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教育用の生理モデル

生理モデルについて

設定を変え、波形と患者の反応を観察し、対応後に再評価するための教育用シミュレーターです。呼吸生理の基本式と研究で示された現象を参考に、学習用の近似を組み合わせています。

実患者の反応や最適な設定を予測するためのモデルではありません。

表示された数値や達成判定を、診療判断・治療の指示に使わないでください。

何に基づくモデルか

特定の論文のモデルをそのまま再現したものではありません。基本式を使う部分、研究の考え方を取り入れた部分、教材のために独自に設定した部分があります。

生理学の基本式
圧・流量・容量の関係、肺胞換気と PaCO₂、酸素含量、酸素解離曲線、酸塩基平衡を計算の土台にしています。
参考にした研究
肺の開放・再虚脱、重力による圧の差、気道閉鎖、食道内圧、患者と人工呼吸器の非同調などの知見です。下に各部分との対応を示します。
アプリ独自の近似
肺単位の数、圧の分布、反応の速さ、循環・薬剤の効果、症例の初期値は学習用の設定です。実患者データに適合させた係数ではありません。
  1. 設定VC・VT 450 mL・Flow 40 L/min・RR 14・PEEP 5・FiO₂ 40%
  2. 計算モデル肺・胸壁・気道抵抗・自発呼吸などの関係
  3. 波形・実測値圧・流量・換気量の波形と、P-V・F-V ループ
VTe
— mL
Ppeak
— cmH₂O
このページの中で、アプリと同じ計算モデルが動いています。患者と設定は教材「コンソールの使い方」と同じです。

肺・気道:開く、閉じる、膨らむ

肺を通常 64 個の計算単位に分け、それぞれに開きやすさ・閉じやすさ・膨らみやすさを設定しています。実際の肺胞の数や解剖学的な区域を表す数ではありません。

  • 各単位の経肺圧が開放閾値を上回ると開き、閉鎖閾値を下回ると閉じます。開閉には時間がかかり、開放と閉鎖の閾値も異なります。
  • 重畳圧は、肺の重さなどによって下側の領域にかかる圧を近似します。仰臥位では背側ほど高く、腹臥位では方向を反転して勾配を小さくしています。
  • 開いた単位は膨らむほどコンプライアンスが低下します。開閉する単位と、この演習中には圧を上げても開かない単位を症例ごとに分けています。
  • 気道の抵抗による圧差と、呼気が終わる前に次の吸気が始まることによる auto-PEEP を計算します。気道閉鎖のある症例では、気道内圧が AOP(気道開放圧)に達するまで、主に回路内のガスが圧縮されます。

このアプリでの簡略化肺単位は共通の肺胞圧を持ち、局所の圧の差を重畳圧で表します。気道の枝分かれや領域間のガス移動は計算しません。腹臥位での再分布を時定数20分、勾配を仰臥位の 60%、回路コンプライアンスを 2 mL/cmH₂O とする値は、このモデルの設定です。

参考:Hickling KG(2001) / Crotti S et al(2001) / Albert SP et al(2009) / Chen L et al(2018)

胸壁・食道内圧・呼吸筋

  • 胸壁の硬さと基準となる胸腔内圧に、呼吸筋圧(Pmus)を組み合わせます。同じ気道内圧でも、胸壁の条件によって肺にかかる圧が異なることを学びます。
  • 食道内圧(Pes)は、モデル内の胸腔内圧に位置・心拍・バルーンの充填状態による影響を加えた値です。閉塞試験では、同じ閉塞区間の ΔPes と ΔPaw を比べます。比が適切でも、絶対値のずれがすべてなくなるわけではありません。
  • 呼吸筋努力と人工呼吸器のタイミングを組み合わせ、無効努力、二段呼吸、自動トリガー、逆トリガーなどを表します。

このアプリでの簡略化胸壁は一つの弾性要素、努力と疲労は設定した関数で表します。Pes は全領域の胸腔内圧を正確に代表する値ではなく、呼吸筋疲労の進行時間も臨床予測には使えません。

参考:Baydur A et al(1982) / Mojoli F et al(2016) / Yoshida T et al(2018) / Thille AW et al(2006) / Akoumianaki E et al(2013)

ガス交換:酸素化と CO₂ の排出

  • 酸素化は、換気の良い領域、換気血流比が低い領域(低V/Q)、ガス交換に参加しない血流(シャント)の 3 成分で近似します。血液の酸素含量を混合し、PaO₂ と SaO₂ を求めます。
  • FiO₂ を上げると、換気される領域の酸素化は改善します。シャント血流はそこで酸素を受け取れませんが、混合後の PaO₂ まで全く変化しないという意味ではありません。反応だけで低V/Q・シャントの割合を決めることもできません。
  • 中央・組織の2区画にCO₂を蓄え、産生・血流による移動・呼気からの排出の収支を計算します。EtCO₂は呼気ごとに更新します。pHは急性緩衝によるHCO₃⁻の変化とPaCO₂から求めます。ABGは採取時点の記録です。

このアプリでの簡略化酸素解離曲線は標準条件の Severinghaus の式を使い、pH・体温・2,3-DPG による曲線の移動は反映しません。慢性のHCO₃⁻を初期値に使います。腎性代償や乳酸増加による代謝性アシドーシス、血液の非線形CO₂解離曲線は未実装です。SpO₂ の遅れや EtCO₂、低V/Q と死腔の変化も教育用の近似です。

使用している主な式と単位を見る
肺胞換気と PaCO₂
PaCO₂ ≈ 0.863 × V̇CO₂ ÷ V̇A。V̇CO₂ は mL/min(STPD)、V̇A は L/min(BTPS)。V̇A は換気量から死腔の影響を除いた値です。
肺胞気の酸素分圧(簡略式)
PAO₂ ≈ FiO₂ × (760 − 47) − PaCO₂ ÷ 0.8。FiO₂ は小数、圧は mmHg。海面上の気圧と一定の呼吸商を仮定し、高 FiO₂ での補正は省略しています。
酸素含量
CaO₂ = 1.34 × Hb × SaO₂ + 0.003 × PaO₂(mL O₂/dL)。CaO₂ は動脈血の酸素含量です。Hb は g/dL、SaO₂ は小数、PaO₂ は mmHg です。
酸素解離曲線
SO₂ = 1 ÷ [1 + 23400 ÷ (PO₂³ + 150 × PO₂)]。Severinghaus(1979)の標準曲線の式です。
酸塩基平衡
pH = 6.1 + log₁₀[HCO₃⁻ ÷ (0.03 × PaCO₂)]。HCO₃⁻ は mmol/L、PaCO₂ は mmHg。Henderson–Hasselbalch の関係を使います。

数値計算には上下限を設けています。極端な条件での値を外挿したり、実患者の測定値の代わりに使ったりすることはできません。

参考:Severinghaus JW(1979) / Riley RL, Cournand A(1949) / Petersson J, Glenny RW(2014)

循環・薬剤・処置への反応

循環血液量に応じた静脈還流曲線と心機能曲線の交点から心拍出量を求めます。胸腔内圧、過膨張、低酸素・高CO₂、呼吸努力の影響も近似しています。酸素化だけでなく、PEEP や手技による循環への負担も観察するための仕組みです。

  • 吸引、回路の再接続、チューブ位置の修正などは、対応するモデル内の条件を変更します。所要時間は下記の教育モデルの候補であり、実際の手技の難しさは再現しません。
  • 薬剤は薬品名・投与量ごとの薬物動態を計算しません。気管支拡張薬・鎮静・筋弛緩は徐々に効果が変わります。乳酸は酸素運搬不足で産生され、回復後も時間をかけて低下します。昇圧薬の強度はモデル内の単位です。
  • BVM は通常は気管チューブへ、再挿管の段取りでは抜去後のマスクへつないだバッグを想定した簡略な圧源です。バッグの押し方、マスクの密着、実際の用手換気技術は練習できません。

このアプリでの簡略化右心の後負荷は代理指標であり、右室の形状・肺血管網・不整脈・体液移動・個別薬剤の副作用は再現しません。低酸素・低灌流・高度アシデミアの累積で重篤化を表しますが、実患者の予後予測には使えません。反応の大きさや速さ、輸液を繰り返した場合の値は、臨床上の用量・効果の根拠にはなりません。

教育用の近似と測定の限界

新しい演習は現在の計算方法で開始します。過去の記録・進行中の講義・やり直しは開始時の計算方法を維持し、保存済みの測定値を書き換えません。以下の係数は教育用の設定で、実患者データによる校正・医学監修は未実施です。

  • CO₂は中央・組織の2区画で、産生、血流による移動、肺胞換気からの排出を計算します。開始設定の換気と自発努力が釣り合うように初期化します。食道挿管や重い気道閉塞から始まる教材では、初期の換気不全を残します。
  • CO₂の線形容量は中央12、組織45 mL STPD/mmHg、区画間移動は0.55 mL/s/mmHgです。呼吸筋圧と呼吸数は患者の基準PaCO₂からの差に応答します。応答の大きさは教育用の近似で、個人の換気応答試験を再現する値ではありません。
  • 急性HCO₃⁻は基準PaCO₂から1 mmHgの変化につき、上昇時0.1、低下時0.2 mmol/Lを加味します。慢性の基準値は維持します。CO₂と酸素化には時間差があり、設定変更直後の値だけで判断しないでください。
  • 再開通しやすいARDSの肺単位の開放圧平均は9 cmH₂Oです。同じVTでPEEPを変えた前後のPplat・total PEEPからCrsを比較します。この値は実患者の再開通圧の推奨値ではありません。
  • 循環は胸腔圧・血流・前負荷・圧反射から計算し、教材名ごとの血圧補正は加えません。輸液500 mLで血液量を更新しますが、体液の分布・排泄は扱いません。気胸・針脱気・ドレナージの反応量と時間も教育用の近似です。
  • 処置時間は吸引12秒、再挿管83秒、胸腔ドレナージの準備150秒、体位変換180秒としています。再挿管はBVM前酸素化と20秒の無呼吸挿管を含みます。実際の人員・熟練度・薬剤用量の違いは再現しません。
  • 痰の流量波形のギザギザは、表示用の流量だけに加えています。振れ幅と周期は教育用の見た目で、診断精度や痰の量を測る値ではありません。吸引前後の呼吸音・流量・圧・酸素化を合わせて確認します。
  • PEEPを上げた直後は肺に蓄えられる量を含むため、短い移行期間の低VTeを単独で回路外れと扱いません。持続する回路外れは警報の対象です。新しい分時換気量警報は、手技による中断を含まない直近1分を確認して判定します。
  • Pplatはホールド時点の測定値で、自動更新しません。total PEEPとの測定間隔が30秒を超えた組はCrsの計算に使いません。食道挿管中の換気量は肺の換気評価から除きます。
  • 重篤化はSpO₂・平均血圧・pHの変化を積算します。低い収縮期血圧だけが長く続いても終了しない場合があり、終了しないことは観察を続けてよい根拠にはなりません。警報と診察所見から対応を考えてください。

肺ユニット図・CTの読み方

アプリの模式CT画面。左右の肺を断面図で示し、モデル内の含気の違いを濃淡で表示する。
アプリの模式CT。教育用モデルの状態を描いた説明図です。

肺ユニット図と模式CTは、計算単位の開閉や膨らみを見える形にした説明図です。解剖学的な形状、血管、骨、陰影の配置は模式表現で、実際のCT画像や HU(CT値)を計算したものではありません。開く領域と開かない領域の区別は、実患者では直接分からないモデル内部の情報を含みます。

患者条件に表示する「仮想CT」は、症例の肺病変をイメージするためにAIで作成した固定画像です。実際の患者画像ではなく、生理モデルからCT値を計算して生成した画像でもありません。設定変更や治療による変化は反映しません。

CTで見分けられない呼吸努力・循環・リークなどの条件が異なる症例では、肺野の画像を共有しています。自作症例・反復ドリルでは、元にしたモデルの参考画像として表示します。1枚の画像だけでPEEPへの反応や離脱の可否を判断することはできません。

気胸の進行・ドレナージ後の回復や体位変換など、一部の時間変化を設定しています。感染・肺傷害の進行、治癒、長期予後を再現するものではありません。波形は 100 Hz で記録し、実機固有の制御や全ての警報を再現していません。

AIを用いた制作と、検証の範囲

本アプリの生理モデル・教材・実装の制作には、Fable5.1、Astra Ultra など複数のAIモデルを使用しています。この記載は制作に用いたAIの情報であり、医学的な根拠・監修・モデルの正確さを保証するものではありません。

演習中の波形や生理値は、組み込まれた計算式と症例条件から算出しています。AIが患者の反応をその都度生成しているわけではありません。AIを用いたコードや解説には、誤りや簡略化が残る可能性があります。制作での生成AIの使用範囲は開発・検証についてに記載しています。

ソフトウェアの検証
単純化した条件での解析解との照合、換気量・ホールド・auto-PEEP・AOP・R/I・Pes の挙動、保存と再開、教材の進行などを自動テストと画面操作で確認しています。条件ごとの許容差を使った検証です。
臨床的な妥当性
実患者データとの比較による妥当性検証は行っていません。第三者による医学監修は未完了です。自動テストの合格や教材の達成は、実臨床での安全性・有効性や技能の認定を意味しません。

説明と実装の照合日:2026年9月25日

参考文献と、確認した範囲

モデルの参考資料と、教材の臨床的な背景に用いた資料を含みます。ガイドラインや臨床試験は、本アプリの計算式・独自係数を検証した資料ではありません。抄録・二次資料のみの項目は、その範囲を明記しています。

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